おらがだの「鮭とば」ってのはなあ。

鮭だ鮭を持ってこい「鮭とば」の季節だ。僕らのショップにも続々と入荷している。どんな味なのってよく聞かれるけど、四の五の言わずに、ほれほれ、食べてみてほしい。袋から一本取り出してお天道様にかざせば、太古のロマンを帯びた琥珀色。口に運ぶ前から鼻腔に流れる鮭の香り。間髪入れずにやってくるのは、嗚呼なんとも保存食らしい独特の風味。それ以上は自分の舌に聞いてほしい。

そんなおらがだの「鮭とば」についてもっと知りたくなったので、鮭とば生産者の八鍬孝利さんのもとを尋ねた。

ー この「鮭とば」は村のどこで生まれたんでしょうか?
いまはもう亡くなってしまったんだけども、廃棄されたり畑の肥やしになっていた鮭の身を、美味しく食べようってレシピを開発した人が鮭川にいたんです。
だから、このレシピっては私が開発したわけじゃなく、鮭に関わる人の中で代々引き継がれてきたものなんです。つくる人によって、味の違いはあると思いますけど、それは好みとか、食べる相手によって変えてたりするからで。鮭とばのベースはおんなじ。

ー なるほど。孝利さんならではの味つけもあるということですね!これはどのような過程を通って出来上がっていくんでしょうか?
10月から11月頃、鮭川を通って泉田川に遡上してきた鮭を捕まえる。おらがだは「鮭のふ化事業」をやってるもんですから、メスの卵とオスの精子は抜きますが、鮭の身が残るんです。これが昔は肥やしになっていたって話です。これを三枚おろしにしてから短冊状に切って、たっぷりの塩に漬けて塩蔵するんです。ちなみに、鮭(よう)のじんぎりもこの身を使ってますよ。
塩蔵して冬を迎えたら取り出して、流水で2日間塩抜きをします。そのままじゃ塩っぱくてとてもじゃないけど食べれない(笑)それが終われば、あとは漬けダレに3日間漬け込む。そして一本ずつフックに通してから、ずらっと干して、乾燥具合が仕上がれば完成です。

ー じっくり時間をかけて作られているんですね。すぐ加工しないで、塩蔵しておくのはどうしてですか?
それはな。まだこの季節があったかいから、虫が寄るんだな。だから一旦塩蔵して、虫がいなくなる時期まで塩蔵しておくんです。やっぱり食べ物だからできる限り安心して食べてほしい。

ー なるほど!このひとつまみに、ぎっしり詰まった鮭の関わりを継いでいく為にも、この鮭とばは大切な食ですね。貴重なお話ありがとうございました。
うん、そうですな。最近はもう鮭を食べるってことが減ってきたから、まず美味しく食べてくれたらいいなあ。